天国と地獄

2/5
140人が本棚に入れています
本棚に追加
/414ページ
それは…天国の、ある日の早朝。 神様は雲の上のお花畑に立っていました。 お花畑は白い花びらの蕾が沢山膨らんでいます。 そして、ゆっくりとその蕾が次々と花開くと、小さな光の粒がふわりと浮かび上がりました。 神様は杖を優しく左右に大きく動かすと、小さな光の粒は雲の下へ順番に降りていきます。 「素敵な人生を!」 神様は雲の下に降りて行く沢山の光の粒に言いました。 そう。 神様は人間の赤ちゃんになる魂たちに声をかけたのです。 光の粒は、今からお母さんになる女性のお腹に入り、赤ちゃんの魂の素になるのです。 色々な場所に散っていく光の粒を見下ろしながら、神様はゆっくり頷き微笑みました。 そして、また白いお花から光の粒がふわふわと浮いてきます。 しかし、神様が杖をゆっくり振り上げようとした時でした。 「神様、おはようございますっ!!」 小さな体で木の実を運ぶ妖精が、神様に大きな声で挨拶しました。 驚いた神様は1つの光の粒に杖を当ててしまい、光の粒はヨロヨロと地面に落ちてしまいました。 「「あぁっ!」」 神様と妖精は同時に叫び、落ちてしまった光の粒のそばに寄りました。 神様は水をすくうように光を手に取ります。 「……大丈夫かのぅ…」 「神様、申し訳ございません。私が声をかけてしまったばっかりに…」 「いや…仕方ない。」 光はしばらく神様の手の上でジッとしていましたが、そのうちゆっくりと再び浮かび上がりました。 「おぉ…良かった!しかし、生まれてくる体に傷がついてしまうかも知れないの。」 「えぇ!?そんなっ…」 妖精は大きな目に涙を浮かべました。 神様はそんな妖精の小さな頭を人差し指で優しく撫でます。 「だけど、それにしても…」 「え?」 「この子はとても綺麗な子に育つようじゃ。楽しみじゃのー。人間の世界でいうイケメンというやつじゃな」 神様は自分の長いヒゲをフワフワと触りながら シャシャシャと笑いました。 「そうじゃ、傷つけてしまった詫びにとても幸せな暮らしができるように取り計らってあげよう」 神様が杖を振り上げたその時です。 「おやめ下さい!」 1人の天使が走り寄って来ると、神様の杖を急いで掴みました。
/414ページ

最初のコメントを投稿しよう!