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ソラトはドラゴンの指示どおり、級を上げるために依頼をハイスピードでこなしていった。
「ソラト。そろそろ級は上がったか」
「中級に上がったよ。もう少しで最年少記録だったって言われた」
ソラトは言われていたとおり、こまめに報告に来て顔を合わせていたので、足は震えなくなった。
だいぶ慣れてきたようだ。
「これからお金が貯まりやすくなるのだな」
「うん。でも、この先はちょっと依頼がきつくなるんだ。あまり自信ない」
「冒険者とは戦う仕事でもあるのだろう? その割にお前は強そうに見えない」
ドラゴンは、「私が鍛える。ついて来い」と言うと、ソラトを横穴に案内した。
「中、こんなに広くなってたんだ……。しかも真っ暗じゃなくて薄明るい」
穴の奥深くは、ドーム型の広い空間になっていた。
「我々の巣の一つになっていたところだ。上に小さな穴がいくつかあり、光も入ってくる」
「ねえ、あの……あ、そうだ」
「……?」
「君に名前はあるの?」
「あるが。人間には発音できない」
「何て呼べばいいの」
「お前が勝手に決めていい」
「じゃあ……そうだな、デュラって呼ぶけどいい? 今適当に考えた名前だけど」
「ああ、かまわない」
「デュラ、君はなんで一人でここにいたの?」
「遠くの山で、勇者と戦闘になり負傷したからだ」
かなりひどい負傷であり、同胞に抱えられてここまで運ばれた。
ドラゴンを含め、魔物は回復魔法が使えない。
この巣でゆっくり傷を癒せるよう、そして他のドラゴンが不在のときに人間に狙われないよう、横穴を隠され、長い眠りについていた。
その眠りが覚め、穴から出てきたら、そこにソラトがいた。
デュラはそのような説明をソラトにおこなった。
「では稽古を始めよう。本気でかかってきてもらってかまわない」
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