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「結城 カイトさん。」
「……はい。」
丁寧に名前を言い直され、カイトは生つばを飲み込む。
「人生なんてね、そう簡単に変わるものじゃないのよ?
この研究所は駆け込み寺でもなんでもないわ。」
「そう……ですよね……。」
「あなたに『人生を変えよう』という強い意志がなければ
結局は何も変わらない。わかって?」
「……。」
カイトは俯き、考えを整理する。
自分はどんな気持ちでここへ来たのか?
そんな簡単な気持ちだったか?
助けを求めてここへ来たのか?
「あなたにその意志がおありかしら?」
ーーいや、違う。逃げるために来たんじゃない。
ーー目を背けてきた事も、避けてきた嫌なものも、全て受け入れる。
ーー現実を受け入れた上で、人生を変えたいんだ。
自分の気持ちと向き合ったカイトは、
顔を上げてユミの瞳を真っ直ぐに見た。
言葉にこそ出せなかったが、
自分の気持ちに偽りはない、この人の瞳に負けたくない、と。
「……!」
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