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「カイトを帰らせようったって無駄だぜ、ユミ。」
いつの間にか3人分の麦茶をトレーに乗せて戻ってきたハテルマは言った。
「ありがとう、ソウ。
そんなことは思っていないわ。」
ユミはハテルマから麦茶を受け取ると、カイトへ差し出した。
「どうぞ、召し上がって、結城さん。」
「……ありがとうございます。」
カイトは麦茶を口に含むと、初めて喉がカラカラだったことに気づき、
麦茶を一気に飲み干した。
「随分のどが乾いてらっしゃったのね。」
「すみません。」
「よろしかったら、こちらもどうぞ。」
ユミはそう言うと、自身のコップもカイトへと渡して続けた。
「ソウがあなたを連れてきたのも、何となくわかったわ。」
カイトには何がなんだかわからなかった。
しかし、先程までとは状況が一転したことだけは
なんとなく感じていた。
「サイコ・パッシブってだけで連れてこられたんじゃ、
犬や猫だってお客さんになってしまうものね。」
そう言って笑みを浮かべるユミ。
カイトは目の前のユミがつい今しがたまでの女性とは
まるで別人のようにとても可愛らしく思えていた。
「なに、にやけてるんだ、カイト?」
「……え……いや……。」
ハテルマに指摘され、思わず顔を赤らめる。
そんなカイトを、ハテルマはニヤニヤしながら見ていた。
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