序章

3/5
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
「まったく、何が"君の色は何色"よ……。 『きっと赤だね』って……、 気色悪いったらありゃしない!」 身の毛もよだつ思いに、ぶるると身震いをする。 「顔さえフードに隠してなかったら、 見つけて警察に突き出してやったのに! あー、もう忘れよう。」 歩行者信号が青に変わると、人々は一斉に道路を渡りだす。 彼女もまた、歩行者信号に合わせるように、思考のスイッチをオフにして、 人波の流れに任せなががら対岸へと渡る。 交差点の中央まで来ると、再び先程の記憶がよみがえる。 「だいたい、赤なわけないでしょ! 欲求不満じゃないんだから……。」 もう大丈夫という安心感が、 彼女に怒りの感情をふつふつと沸き立たせる。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!