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(ホント馬っ鹿じゃないの)
またウンザリ。
あんたが貢いだ金だけじゃムリに決まってるでしょう。
他にもエサ男は掃いて捨てるほどいるんだから。
もっとも、そいつらには結婚&縁切りメールを一斉送信してブロック済みだ。
さんざんドンペリだロマネだと、エサ男に大金を注ぎ込ませるのも今日で最後よ。
だって、わたしはついに幸せをつかむんだから。
「あの、約束があるのでもう行きます」
なおも追いすがるエサ男を振り払うと、走ってきたタクシーに乗りこんだ。
「このカマキリ女が……絶対ゆるさねえ。生きているのを後悔させてやるからな!」
エサ男が殺気で煮えたぎる眼で叫んだ。
その眼があまりにも怖いので、心ならずも靴のなかまで震える。
「せ、せいぜい吠えることね。あんたなんか手の届かないところに行くんだから!」
怖じけそうになる心を手なずけながら言葉を返した。
わたしは運転手に行き先を告げると、コンパクトミラーで化粧をチェックする。
かすかに手が震えていた。まだ心臓がバクバクしてる。
(ちくしょう)
誰ともなく毒づく。
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