シュガー

2/2
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
 こちらが悪いのだが、一緒の職場にいるのが気まずかったから、いなくなってくれてホッとしたと内心で胸を撫で下ろした。でもその日から、俺は同僚の残した言葉通りずっと後悔している。  きっかけは、同僚が会社を辞めて以降、最初に飲んだウーロン茶だった。  一口目は普通にウーロン茶の味をしていたのに、飲み進めるうちにどんどん甘くなって、最後は砂糖水を飲んでいるような味しか感じられなくなっていた。  飲み終えてから水で口をすすいだが、その水すら甘い。味わいを変えたくて塩気のある物を食べてみても、口にする物総てが砂糖並みの甘さだ。  甘い物はかなり好きだが、何もかもが砂糖の味しかしないなんて辛すぎる。  慌てて医者に行ったが原因は判らず、途方に暮れる俺の意識に、同僚のあの日の言葉が甦った。 『後悔させてやるからな』  どうにかかつての同僚に連絡を取ろうとしたが、誰もそれを知らなかった。今の居場所も実家の場所も、電話番号の一つすら知る者はいない。  …以来、俺は何を口にしてもそれを砂糖味にしか感じられず、ろくに水を飲むことすらできないまま、どんどん痩せ細る日々を送っている。  もう遅いのかもしれないけれど、土下座でも何でもするから、俺の味覚を元に戻してくれ…。 シュガー…完
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!