シュガー

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シュガー

 同僚の一人に甘い物がとことん苦手な奴がいる。  勧めても甘い系統の菓子類は食べないし、果物などの甘味すら苦手らしい。  どちらかというと俺は甘党で、甘味が苦手なんて損をしてると思っていた。その意識がいつしか高じて、部署で行われた食事会の時、そいつが飲んでいたウーロン茶にテーブル上のスティックシュガーを混入させた。  ウーロン茶を甘くしたことはないが、コーヒーや紅茶にだって砂糖は入れるのだ。別段そこまでおかしな味になる訳でもないだろう。  甘い物が好きな俺はそう思ったのだが、苦手な同僚はそれを飲むなり激しくむせて、最終的には戻したのか下したのかは定かでないが、トイレにこもってしまった。  最初は軽いいたずらだからと詫びるつもりはあったけれど、逆に状況が大事になりすぎて、俺はいたずらをしたことは認めたが、同僚が大げさすぎるんだと自分の非は認めなかった。  それに対し同僚は、俺に罵声を浴びせたり暴力に訴えてくることはなかったけれど、たった一言『後悔させてやるからな』とだけ告げた。  以降、同僚とは死後の上ですら極力関わらないようにしていたのだが、ある日、俺の知らないうちに同僚は会社を辞めた。  周りに聞いても理由ははっきりとせず、故郷に帰ったらしいという、どこまで本当か判らない噂が残ったのみだ。
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