episode223 奪い合い①

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episode223 奪い合い①

何もなかったことにしようという力が働いた。 「可哀想に九条家の拓海様――義姉に恋焦がれるあまりおかしくなってしまったんですって?」 「まあ、あれだけ美しいお義姉様ですものね」 「和樹様――その後拓海様のご容態はお聞きになって?」 貴恵と拓海が道理に背いた件も 征司と九条さんが大いに揉めた件も そして僕をめぐる2人の狂乱も 「いえ、皆さん大袈裟に仰るの。恋の病で気が狂うなんてさ、19世紀の小説の中でだけ」 一旦胸に収めた。 各々が 出来る範囲で 一旦収拾したんだ。 「いいですか、お嬢様方。現実はそんなにロマンチックじゃない。こと恋愛において人は――」 パーティーの最中。 年端もいかぬ女の子たちに向かって 饒舌に持論を説く僕の前に 「――こと恋愛において人は?」
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