134人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
episode223 奪い合い①
何もなかったことにしようという力が働いた。
「可哀想に九条家の拓海様――義姉に恋焦がれるあまりおかしくなってしまったんですって?」
「まあ、あれだけ美しいお義姉様ですものね」
「和樹様――その後拓海様のご容態はお聞きになって?」
貴恵と拓海が道理に背いた件も
征司と九条さんが大いに揉めた件も
そして僕をめぐる2人の狂乱も
「いえ、皆さん大袈裟に仰るの。恋の病で気が狂うなんてさ、19世紀の小説の中でだけ」
一旦胸に収めた。
各々が
出来る範囲で
一旦収拾したんだ。
「いいですか、お嬢様方。現実はそんなにロマンチックじゃない。こと恋愛において人は――」
パーティーの最中。
年端もいかぬ女の子たちに向かって
饒舌に持論を説く僕の前に
「――こと恋愛において人は?」
最初のコメントを投稿しよう!