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現れた
「征司お兄様――」
一瞬で空気を緊張させる
天宮家の王様。
長い指でワイングラスの頭を鷲掴み
悪戯にグルグル回すと
「続きは?」
意地悪く口端を上げて
閉口する僕を促す。
「あの、征司様もよろしかったらぜひご一緒に」
「僕が?お嬢さんたちと恋愛談義を?」
「ええ、ぜひ」
モデル顔負けの立ち姿
洗練されたファッションだけで
女の子たちは圧倒され頬を紅潮させる。
「どうかな、僕の恋愛観は――少し偏っていてお嬢さんたちには刺激が強すぎるかもしれない」
その上
身に纏う退廃の空気と
優雅な威圧感がそれだけで
「……ぜひ教えて下さい」
「お願いします……」
関わる人間に特別感を与えるんだ。
「じゃあ少し座ろうか」
この人に構ってもらえたというだけで――。
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