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つぎつぎと
次の屠殺日にも、私は両手をタライの血の中につけました。両手で血をすくって、顔を近づけてみました。生臭いにおいに少しためらいましたが、血の中に顔をつけました。しばらくそうしておいて、そっと顔をあげました。頬から顎からポタポタと血がしたたりました。
布で血をぬぐってみると、かさかさしていた唇がふんわりと柔らかいことに気づきました。私はタライに顔を何度も何度もつけました。
私の顔を見た母が驚いてたずねましたが、私はシラを切り通しました。この秘密は私だけのものです。
ですが、すべすべになった肌も二、三日もすればまた元のガサガサと荒れた手に戻りました。私は日々荒れていく手を握りしめて次の屠殺日を待ちました。
ところが、その日は永遠にやってきませんでした。
大きな嵐がやってきて、鶏小屋を吹き飛ばしてしまったのです。その時の怪我で父も死んでしまい、母と私は離れ離れに遠くの農場に住み込みで働きに行くことになりました。
私が働いた農場は牛と豚は飼っていましたが、鶏は持たず、心底がっかりしました。私はガサガサの肌のままおばあさんになって死んでいく夢を見て飛び起きることがよくありました。
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