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それから。
希望は、不登校をやめた。
長かった髪を切った。
思い切って、眼鏡をコンタクトに変えた。
……嫌がらせをしてきたクラスメイトに、「やめて」と勇気を持って、言った。
希望は、未来のために、少しだけ勇気を出した。
希望を取り巻く世界が、その日から変わった。
イメージをがらりと変えた希望を無視するものは減り、勇気を持って発した言葉が、もともといじめを良しと思わなかったクラスメイト達の共感を得た。
昼休み、ひとりでいることが無くなった。
『いじめ』の空気は次第に薄れていき……
いじめの中心にいた派閥はいつしか少数派となった。
やがて、いじめ自体が無くなった。
また、楽しい学校生活が始まる。
でも、それは『元に戻った』だけ。
これから進んでいこう。
もっと、もっと明るい未来へ。
幸せな、未来へ。
母と話した。
父の事を、母の口からしっかりと聞き、それを希望は受け入れた。
それで、母の心の鎖も解けた。
いまの母娘は、言いたいことは包み隠さず打ち明け、相談し、協力し合える。
そんな母娘の関係が築けたことも、希望にとっては『幸せな未来の始まり』。
仏壇に、父の写真が飾られるようになった。
優しかった、希望の記憶に残る父の笑顔。
希望は毎日、父に声をかけている。
父は心の中に存在している。
優しい父の思い出を心に宿し。
父がくれた、『希望』という、希望に満ちた名を守りながら。
「お父さん、行ってきます!」
今日も希望は、父の写真に笑顔を向けた。
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