色のない私

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色のない私

この世界は光で満ちて、真夜中になっても 様々な色が光となり主張している でも、私の心にはフィルターがかかっている どこを見ても光なんてものは見えない いつから、こんなフィルターがかかったのか、 考えなくても知っている だからこそ、このフィルターがなくなればいいなんて 私は思いもしない これは罰だから 「…昼」 やけに煩いと思って閉じていた瞼をそっと開けると授業は終わり昼休みになっていた。 50分椅子に縛られていた生徒たちはその解放感からやたらと元気。私は無言で財布を持って1階の自販機に向かう。お腹は空いてない。 チャリン 100円を入れてアイスココアのボタンを押した。紅茶は嫌い、香りがダメ。コーヒーも嫌い、苦すぎる。 冷えた缶を持って向かう先は煩い教室ではない。人が滅多に来ない庭。 「ちょっと暑い、けど仕方ないか」 庭には椅子やベンチはない。あるのは花壇だったと思われるレンガを四角く囲い積んだスペース。そこに腰掛けてココアを一口。 「なんで自販機のココアて薄いのかな?」 「!!」 びっくりした…。私以外にここを知ってる人がいたんだ。 見覚えのない男子生徒。人は見た目でないと言うけど、第一印象は簡単に拭いきれない。パッと見普通。眼鏡かけてるけど優等生過ぎず、自然だ。そんな、人がなんで話し掛けるかな? 「なんでか知ってる?俺初めて飲んだから分かんなくて」 「安いから、じゃないの」 「成る程。ちょっと納得したわ」 そう言って同じ缶ココアを飲み干した。ここにはゴミ箱なんてないから、校内のゴミ箱まで持っていくかポイ捨てするかしか選択肢はない。多分この人はゴミ箱まで持っていきそう。 「ここいいね。静かで」 そう言いながら庭を見て回る。ここは私だけのものじゃないから、他人が入ってきても構いはしない。 そもそも学校に個人の場なんて机と椅子がセットされたあの小さいスペースだけだ。 「ここにいるには自己紹介必要?」 「いらない。興味ないし」 自分のココアを飲み干したから校内に戻ろう。まだ時間には余裕ある。 「俺持ってく。柚木さんはまだいたいよね」 「は?」 「名前くらい知ってるよ。1組柚木綾乃。これ捨ててくるから、今度は俺の名前知ってね。方法なんでもいいから!」
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