第1章

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夕方になると、人もまばらになる。 夕暮れの海は赤く染まって綺麗とか言うんだろうな。 そんな中、周りをキョロキョロさせながら辺りを伺っている少女が私のもとにやって来た。 「アナムクルカのバカヤロー! ビーマンがそんなに好きか! また育てんの大変なんだ…これだからRPGというやつは!」 意味不明の言葉が並ぶ。 しかし、これは解説ができるので少しだけだが解説させてもらおう。 これはとあるRPGゲームでの話で…アナムクルカというイケメンの魔法使いがシナリオの展開で一時仲間として使えなくなるのだ。 師匠のビーマンに、事件の詳細を連絡する必要があるためらしい。 魔法使いは全体攻撃が得意なので、高コストだがレベル上げに欠かせない。 単調な作業だが、強力な全体攻撃による雑魚の一掃はゲーム中のフラストレーションを大幅に軽減する。 ゆえに、強い装備やスキル習得のポイントを優先的に割り振ると一気に戦力がガタ落ちする。 RPGのモチベーション維持は操作キャラの性格と能力も必要とする。 それでプレイしながら最終メンバーの優先順位を決めるわけだが…どうでもいい連中と旅をしているとプレイを投げ出したくなる。 これをキャラロスシンドロームと名付けよう。 それにしても、ゲームなのに激しい怒りが伝わってくる。 虚構なのに実話。 海にぶちまけたいだけの魂の叫びが、人が紡いだ夢の世界にもあるのだろうか…? だとしたら、人間は忙しい生物だ。 あらゆる場所に思考を置いて生きている。 私は海だから、もはやあらゆる出来事がどうでも良いが…人間はあらゆる箇所に一喜一憂し…かつ人生を愛しく思うのだろうか? そう考えると少しだけうらやましい。
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