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それは、沢山の複眼では無かった。
「……岸田君。……佑」
「……カニ子」
岸田は呟くように、唖然とした顔で言う。
それは、20人のクラスメイトと、その子供達6人の顔だった。
普通は頭のある所が、コブのように盛り上がり、そこに沢山の顔が蓮の実のように付いている。そられが、口々に叫ぶ。
岸田助けてくれぇー
岸田君、痛いよぉ……。
苦しいよぉー
殺してくれぇー
怖いよぉー
「どうだい? 買収した企業の技術で作ったんだよ。遺伝子操作ってヤツだ。人と類人猿を掛け合わせて、パワフルな兵士でもと思ったんだが。最初は大柄な人型の肉でしかったんだが、それにマリ子が君のお友達とお子さんの精神を定着させたら、どんどん変化してこうなった。これは科学では無いね。呪いとかサワリとかそういう類の力だな。ナチス時代から語られた人類の夢、科学とオカルトの完璧な融合だよっ! 素晴らしい!!」
飛三は興奮し嬉々として言った。
それから、一旦勿体振り
「そして、新しい少年Xにはあらたな能力があるのだ」
そう言った。
新しい少年Xには前と大きな違いがあった。
それはーー、
口だ。
丁度、人で言うなら胸の上くらいの所に大きな唇が付いていた。
それは飾りでは無かった。
ぐわっと、ガマガエルの様に大きく口を開くと、粘ついた唾液が糸を引き、人間の歯そっくりの巨大な歯が並んでいる。牛くらいは丸呑み出来そうだ。
少年Xは四つ足で、研究員達の屍にゆっくりと近付くとーー、
山と積まれた研究員の屍を、バリバリと骨を噛み砕きながら貪り喰って、頭(なのか?)を上げると、ゴクリゴクリと美味そうに飲み込んだ。
口の端から、研究員達の泡立った血がボトボトと溢れ落ちる。
「今度の少年Xは喰うんだよ。ーー人をね。素晴らしい。コイツは、もはやスーパー少年Xだっ!!」
飛三は歓喜しそう叫んだ。
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