序は緩やかに~って、俺確かに魔王なんだけどさ

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 地平線の見える黄色い大地。雲ひとつない、澄んだ空。  どこまでも続くような青。ではない。赤みがかったラベンダー色の空だ。俺の知る地球の、日本のものではない。  ここは異世界、俺はなぜか記憶を持ったまま、別の世界へ転生したらしい。  前の世界の俺は、本を読むことが好きな、ごく普通の大学生だった。ラノベでよくある異世界転生ってやつだな。  その日いつものように大学の図書館に寄った時のこと。両脇に本を積み上げて、さぁ読むぞと思った途端、俺の足元が大きく揺れた。どうやら地震が起きたらしい。頭の上で轟音がして、そこから先の記憶がない。  気がついたら、こちらの世界に生まれ変わっていたというわけだ。それも普通の転生じゃない。前世の記憶を持ったまま、この世界のことを理解し、さらに自分が人間ではなく魔族、それも魔王と呼ばれるレベルの力を持つ存在だということも解ってしまった。  魔族ってだけでも厄介なのに、魔王だぞ。いやな予感しかしない。だが魔王というだけあって、俺はチートと言えるだろう力を持っていた。やったね。とはいえチートでやりたい放題だってのに、王さまなんて面倒なのはごめんだ。その場で即、自分の力を半分以上封印したよ。  しかしホッと一息ついた俺は、そこでひとつ、問題点に気づいた。いや、まず最初に気づけって話なんだけど。
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