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手を伸ばしても、泣き叫んでも届かないとわかっていて、いつもそばにいるような気がした。
忘れることさえ出来なかった。
澪の痩せた指には似合わないダイヤの指輪。
東吾はそんな光りだった。
出会ってはいけなかったのか。
望んではいけなかったのか。
あんなにも、追い求めたのに。
運命はどこまで澪を弄ぶのか。
澪の泣き声が少しずつ小さくなっていく。
その心の中の葛藤は、嶋には計り知れない。
ただ、澪が崩壊してしまわないようにと、強く抱いた。
--ここにはもういられない。
澪は嶋の温もりを背に、瞳を上げる。
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