素直な君に恋をして

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 僕の体に触れた彼女の背中は、とて もとても暖かかった。   包み込まれるような優しさの中、僕は腕に力を込める。  僕の気持ちを、この思いを、この愛を届けるために。  彼女の体がびくびくと震えている。  命だ。  僕は彼女の命そのものを今、感じているんだ。  押し寄せる絶頂に身をゆだね、僕は彼女の背中に頬をぴたりとくっつけた。  どくどくと感じる彼女の鼓動が、ゆっくりと、ゆっくりと無くなっていく。  なんて儚いんだ。  彼女は綺麗で、優しくて、そしてとても儚い。  だから君は露出度の高い格好なんてしない。  派手な化粧だってしない。  爪だって着飾らない。  喫茶店で足なんて組まない。  立て肘だってつかない。  タバコなんて吸わない。  ましてや男と待ち合わせなんて……。  あまつさえ、公衆の面前で口づけなんて……。    絶対にしない。    そんなのは相応しくない。  君は君らしく。君のままでいい。  そのままの君が最高なのに。  どうして嘘を身にまとうの。  そんな悲しい君は見たくない。  そんな君はいるべきじゃない。  ある種の気高さを身にまとった彼女は、僕の腕の中で死んでいく。  血だまりの中で彼女と向かい合う。  虚ろな瞳に僕が映る。  吸い込まれそうな美しい瞳。     
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