29(承前)

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 タツオはその場にいる7名の体調を観察した。副作用がもっとも重いのは最年長のソウヤ、つぎに汗だくで青い顔をしているのが、自分とサイコ。残りの4名はほとんど影響を受けていないようで、逆に3人の副作用の激烈さに驚いているほどだ。  作戦部逆島少佐の音声だけが控室に響いた。機械で合成したような冷たい声である。 「一錠3000万円する抗時間薬は無駄にできない。皇民の血税による新薬だ。それに実戦でもこうした特殊な副作用がでる可能性もある。それに対する訓練にもなるだろう。時間を60分遅らせて、戦闘訓練は実施する」  誰も文句はいえなかった。これが軍である。命令は絶対だ。タツオの腹のなかにちいさな怒りの炎が燃え立ったが、「須佐乃男」作戦の責任者に抗議をすることはできなかった。 「ただしこちらもきみたち7名のバイタルはリアルタイムでモニターしている。佐竹宗谷少尉は訓練不可能として、バックアップを1名送る」
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