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真っ黒な空が眩しい。
海辺の空には星がたくさん出ていた。
夏の大三角も良く見える。
でも今夜はそれ以上に眩しい灯りが、目の前で賑やかに広がっている。
たくさんの提灯に囲まれた砂浜には、浴衣のカップルや孫を甘やかすお年寄りや部活帰りの中学生が、いろんな顔でこの祭りを楽しんでいた。
自分も今日、あの中で楽しんでいたのかもしれないと思いながら、とっくに水が滴るようになったラムネ瓶の中身を少し口に含む。
今日のこの祭りに、隣のクラスの好きな女の子を誘った。
去年、高校に入学した頃から同じ委員会の、優しくて気の利くいい人だった。
待ち合わせをしたのは2時間以上前。
待ち合わせとも言えないかもしれない、こちらが勝手に誘って待ち合わせを取り付けただけだ。
そして今、隣にその子はおらず1人黒岩に座ってあたたかくなった炭酸水を飲みきれずに弄んでいる。
つまり自分は振られたのだ。
祭りの様子を、ただ見ていた。
その中に入れる気はしなく、ぼんやりと提灯の灯りを目で辿ったりしていた。
「祭りに参加しないのか?」
突然すぎて手に持った瓶を落としそうになった。
声がした真横を見ると、黒っぽい浴衣を着、古めかしい狐の面をつけた男がしゃがみ込みこちらを見ていた。
「、、、誰、あんた。」
驚いたことに気づかれたくなくて平静を装うとしたがこんな台詞しか出てこなかった。
「俺の事はあとでいいよ。それより君、さっきからずぅっとそこで祭りを眺めてるだけだけど、あの中に行かなくていいのか?」
狐面男は低くて落ち着いた声でさっきと同じ質問をする。
「ずっとって、、、見てたのか。」
「こんなところで1人座り込んで動かないなんて、上から見れば目立つからねぇ。」
狐面のせいで顔はわからず怪しいが声の感じからすると、自分よりも少し年上なのだろう。
というよりもこいつは何者なのだろうか。
髪は闇より黒く見えるが、真夏だというのに肌は足元の砂より白く、掴めない雰囲気も相まって、同じ人間なのかすら疑わしく思えてきた。
面で表情が見えないこともあり、何を考えてるのかさっぱりわからない。
上から見ていた、という発言も気になった。
この辺りには神社があり、そこでは狐は祀られる対象だ。
まさかな、、、と思いながらさっきの質問に答える。
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