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「あぁ、、ごめん、俺ここのものは食べられないんだ。あおいは気にせず食べたいものがあれば食べて。」
“ここのものが食べられない”ということに疑問が湧き、理由を聞きたかったけれど、そう答えるコンの声が寂しげに聞こえたからおれは何も気にしていないという風に言葉を続けた。
「そっか。じゃあ他にはなんか、、、遊びたいものとかあるか?」
歩いているうちに周りは眩しいくらい明るい空間になっていた。
数十歩歩いただけなのに、さっきまでいた場所とはまるで別世界ようで。
案外簡単に入れたもんだ。
「遊びたいもの、、、。」
コンは周りが明るくなってから、そわそわと落ち着かなく“遊びたいもの”を聞いてもすぐには見つけられないようだった。
「ごめん、俺こういうところはじめてでわからない。」
最初にくぐった提灯がちょうどやぐらで隠れて見えなくなった頃、コンは申し訳なさそうに言った。
「あおいは、こういうところに来たら何して遊ぶ?」
「おれは、、遊ぶといったら射的とかかな。」
そう言ってからさっき通った射的屋を思い返して見たが、あそこは祭りも終盤に向かいつつあるこの時間ということもありめぼしい景品はほとんど無くなっていた。
「あとは、、、。」
ぐるりと首を回して見ると人混みの中で目に止まった屋台がひとつあった。
「なぁ、コンは金魚すくいってしたことあるか?」
「金魚すくい?」
「金魚をすくうんだよ。」
「すくうって、どうやって?」
「紙でできた、、“ぽい”っていう道具ででっかい水槽を泳いでる金魚を掬うんだ。大抵はその後持ち帰って飼う。」
「金魚を掬う、、。」
コンはなにか考え込んでいるようで、それからしばらく黙ってしまった。
「とりあえず、行って見てみるか?やったこと無いならイメージつきにくいだろ、どんなもんか見てからやるかどうか決めたらいい。」
黙り込んだコンに耐えられなくなり、少し強引に言ってからコンの腕を持って歩き出した。
「うん、そうするよ。」
金魚すくいに対して拒絶の気持ちがあるのかと心配したが、杞憂だったかコンは腕引かれるまま素直についてきた。
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