2354人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
歩道を自転車が駆け抜けて行った。
「歩道を走るなんて……!」
文句を口にした都琴の手のひらが、聡乃の肩を掴んでくれていた。
「大丈夫ですか?」
そして、不機嫌そうな、心配した顔で聡乃を見つめた。
引き寄せてくれた強い力と、守ってくれた些細だけれど反射的な行動に、まるで10代の頃を思い出すような甘酸っぱい感情が、聡乃の心の中に吹き荒れる。
触れてくれた場所がじんわりと熱くなる……。
「今日、何食べたいですか?」
気を取り直して、腕を離した都琴に、聡乃は信じられない衝撃を受けた。
もっと触れていて欲しかった。
手が離れた瞬間、寂しいって思ってしまった。
(いやいや……!)
簡単すぎだろ、自分。
簡単に絆されすぎだろ……!!
隣で青ざめる聡乃の姿を、都琴はもちろん気づいていた。
何を思って青ざめているかまでは分からないが、そんな百面相な姿を見るのは、都琴の楽しみ。
いや、癒し。
聡乃は気づいていないけれど、ふとした時に溢れる表情は可愛くて、いつものできる女上司な印象から一変するギャップというものを持っている。
最初のコメントを投稿しよう!