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「俺がいなくなった後、俺の分まで大好きな親友を幸せにしてやって欲しい。これが本当の、俺からのさゆへのお願い。
那月はお人好しのくせに強情だから、絶対自分からは言わないと思うから、だから……だからさ、さゆから言ってあげて」
理久の顔はもう見えなかった。
滲んで、歪んで、目を開けておくことすらやっとだった。
ただ理久の優しい声だけが届く。
「俺のことは忘れて、幸せになって。誰よりもいっぱいいっぱい幸せになって。
さゆが笑ってくれるとね、俺、すごく嬉しかったんだ。さゆの笑顔が本当に大好きだった。
だから、いっぱいいっぱい笑って、それで……それで、おばあちゃんになって、最後の時少しだけでいいから、俺のこと思い出してくれたら嬉しい。
さゆたちと過ごして、本当に楽しかったよ。天体観測、本当に楽しかった。さゆに出会えて、本当に、本当に良かった。さゆ、ありがとう」
じゃあ、またね。ばいばい。
その声のあと、映像は途切れた。
手から携帯が落ち、鈍い音を立てた。
ずっと我満していた嗚咽が、両手で覆った隙間からこぼれ落ちる。
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