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唐木田書店は、商店街の一角にある古い書店だ。僕は昔から大手の書店に行くことが多いので、入ったことはないのだが、その日は偶然近くを通ったので、試しに入ってみることにした。
客のいない店内。レジには、黒いラインの入ったセーラー服に、赤いエプロンをした少女が文庫本を片手に座っていた。彼女が店員なのだろうか。
よく見ると、彼女のセーラー服には名門私立中学校のエンブレムが入っている。この四月から偏差値マイナス3000の高校に通っている僕は、少し複雑な気分になった。
今どき珍しい、ロングの三つ編みヘア。そしてその横顔は、かなりの美少女である。
「・・・・・・いらっしゃいませ」
こちらを見ずに、ボソリと声を発した少女。無表情。客に対する態度とは思えないが、中学生に完璧な接客を求めるのもどうかと思った。
「・・・・・・どうも」
彼女のテンションに合わせた返事をした僕は、とりあえず小説のコーナーを探した。小説好きというわけではないのだけれど、友達の影響でライトノベル程度は読むようになったのだ。
小説の棚は、流行りの一般文芸が隙間なくその場を埋め尽くしていた。お目当てのライトノベルは、目立たない位置に、申し訳程度に置いてある。僕はパラパラとめくって中身を確かめてみた。しかし、すでに読んでしまった作品ばかりだった。
それにしても、個人経営の書店の仕組みがわからない。嫌でも一冊くらい購入し、売り上げに貢献するべきなのだろうか。
――美少女もいるし。
そんなことを思いながら、周りを見渡した。するとひとつの棚に、紙袋に入った本が並べられているのが目に入った。さらにその表面には、宣伝文句(キャッチフレーズ?)のような、手書きの文章が書かれている。
『恋愛小説の金字塔! 映画化もされた山田山多々郎の代表作』
『マフィアの抗争に巻き込まれた親子が巻き起こすギャグ小説』
など。
タイトルを見ずに手にとって、新しい作品に出会う・・・・・・。DVDのレンタルショップで最近見かけるアレだ。書籍でやっているのは始めて見た。
「気になるの?」
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