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ビカム・スイマー②
僕は急いで立って、ドアノブに手を掛ける先生に叫んだ。
「ありがとうございます!」
頭を下げる僕に、先生は驚いたような素振りを見せるとーーそのあとに、こちらを向いて思いっきり叫んだ。
「ビカム、スイマァ! フォー、ディーズ、イアァァッ! 俺の、英語の先生が言ってた言葉だっ! お前は、四年後にオリンピック出ろぉっ!」
先生は息を切らしたように肩を上下させていたが、こちらに親指を立てると、そのまま扉を開けて影の中へと消えてしまった。
ふと、空を見上げた。
さっきよりも広く大きく感じて、少しビックリした。雲なんて脚立何個あっても足りなそうで、なんだか可笑しくて笑ってしまった。
今だけは、蝉の声も、なんだか笑っているように聞こえた。
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