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『飛行機使っても、移動時間合わせたら3時間半くらいだったっけ?』
『そうだね。新幹線ならもっとかかるね』
『ふーん……』
どのくらいのお金がかかるんだろう、とか、今後どのくらいの頻度で会えるんだろう、とか、どちらからもそんな話題を出さない。ただ、噴水の水しぶきが風で煽られて、それにはしゃいでいる無邪気な双子の姿を眺めているだけだ。
『遠いね』
『うん』
『空は繋がってるよ、とか、くさいセリフはくれないの?』
『ハハ。そういえば、前にそんな話したよね』
道孝は握った私の手を少し持ち上げて、また下ろす。
『今年のクリスマスイブの約束、忘れないでよ?』
『あぁ……』
道孝は思い出すように空を仰いだ。そして、
『他の人に目移りするのは、倫だったりして』
と、鼻で笑って答えた。
『そんなこと言うんだ?』
『最初に言ったのは倫でしょ』
『私は大丈夫だよ。今、くさいセリフのひとつでももらえればね』
口を尖らせながらそう言うと、道孝は『えー』とぼやきながら、
『好きだよ、倫』
と言った。
目の前を2匹のハトが、ブリキのおもちゃみたいにカクカクと首を動かしながら横切っていく。
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