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『彼女』のことは、出会う前から知っていた。
「……先生、抜け駆けでここへ来てはいけないはずだわ」
月面旅行に行った姉を探しているという『M』
彼女のことは、ネットに生息する天体マニアの間ではちょっとした噂になっていた。
「それに、煙草も。
ジイジに見つかったら、即刻屋敷から叩き出されて、明日のお見合いどころではなくなるはずよ」
「んー、そりゃ困るな。
じゃあ、叩き出される前に、君が御所望した品をご披露しておこうか」
俺は唇に煙草を挟んだまま、いつもどおり気だるくかぐやの言葉に答えた。
その言葉にキュッとかぐやの眉間にシワが寄る。
そうだよね、かぐや。
君は品行方正な姿を取り繕っているようだけれど、君の本性はそんなにオキレイなものじゃないよね。
知ってるよ、俺は。
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