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「翔ちゃん! 雨、雨降ってる!」
放課後、ダッシュで翔ちゃんのクラスに行き、廊下側の窓から笑顔で声をかけた。
「知ってるし、声でけーよ」
キレイな顔がこっちを向いた。でもなんだか浮かない顔。
なんでこんなにテンションが真逆なの?
でも、それくらいでわたしの心は折れませんからね。
「今日は一緒に帰れるんだよね?」
無愛想でもなんでもいいよ。
翔ちゃんと帰れるならそれだけでいい。
「俺今日傘持ってない」
「だから?」
そんなのどうでもいいんだけど。
重要なのは傘じゃない。
翔ちゃんと一緒に帰る。これが何より重要なんだから。
実は最近、中学のときあんなに私を避けていた彼が、小学生の時の世話焼き君に復活するというミラクルが発動していた。
それがすごく嬉しくて、子供の頃みたいにまた近くに行きたいだけ。そう、翔ちゃんの気が変わらないうちに!
だけど、今この態度を見て思った。
きっともうそういうのはダメなんだ。私たちも高2だもんなぁ。
それに最近の彼は雨に濡れること自体を嫌がるようになった
小さい頃は一緒に濡れて帰ってくれたのに。そう思うと、どこか寂しい。
「傘持ってるんなら一緒に帰ってもいいけど」
黙り込むしかない。
そうなってしまったのは、翔ちゃんの冷たい声のせいなんだ。
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