2.

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秀朗は嘘はないと証しを立てるかのように、環和からひと時も目を離すことがない。 「でもママは……パパの子供が産みたかったって……」 子供を醜いあひるの子にしないために選んだ――という美帆子の云い分をそのまま伝えるには憚(ハバカ)られ、環和はためらったすえ云い換えた。 「そうかもしれないが……」 言葉を途切れさせたが、秀朗はためらっているのではなく環和のことを慮(オモンパカ)っているように見えた。 親子でないなら、そんな必要もないのに。 環和は内心で投げやりにつぶやいた。 それとも環和が混乱してうまく考えられないまま、都合のいいように解釈しているだけなのか。 「……わたしがパパの子じゃないから離婚したの? それとも、ママのほかに好きな人ができたから?」 無意識といっていいほど、気づいたときはそう訊ねていた。
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