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 数学準備室のソファに組み敷いた明日海先生は、口をパクパクとさせながら私を見上げていた。青白い月の光に照らされているはずの先生は、首も耳も赤く染まっている。 「あれれ?……先生、照れてます?」  その言葉は図星だったらしく、明日海先生のおでこから一粒、汗が落ちた。 「……あの、笹川さん…?何をしてるんですか?」 「迫ってるんですよ?……明日海先生に」 「はいっ?!」 「先生がいつまで経っても、私に手を出さないから。……だから、いい加減……ねぇ?」 「ちょ、ちょっと笹川さん……」  前かがみになって、どんどん顔を近づけていく。  明日海先生の顔色は、赤くなったり青くなったりを繰り返す……まるで信号機みたいに。  耐えられなくなった様子の明日海先生は、大きな声で私の名を呼ぶ。 「『サラ』!」 「……その『サラ』がいいよって言ってるんだから、いい加減手出したっていいじゃないですか、意気地なし!」  どうしてこのような事になっているのか、話は少し、さかのぼる必要がある。    これは、私・笹原沙羅(ササハラ サラ)と、ヘタレ意気地なしこと明日海先生の、文字通り『魂』の攻防戦だ。
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