物語の本

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最初から読んでみると物語のようだ 森の屋敷に住む少女の話 「あら、」 奥から一冊の本を持った女性が現れた 彼女の持つ、透き通るような青色に目が惹かれる 「お客さん、かしら」 「あっ、すいません勝手に」 「いいのよ、誰かに読まれた方が喜ぶでしょうし」 「ここは本屋さんですか」 「そうね…本を扱っているけれど、売ることはできないわね。貸すことならできるかな」 「ここの本って全部小説ですよね」 「そうね、色んな物語が眠っているわ」 レンタル本屋…? 「その本、興味を持ってくれたのかしら」 「えっ、えぇまぁ」 「じゃあお貸しするわ」 「えっでもお金とか、」 「お金は要らないわ。返しに来たときまたお話したいの。人が来るのは久しぶりでね」 優しいけど寂しそうな笑顔にいやと言えなかった 「じゃあ、まぁ、お借りします」 「私ここの管理をしてる、ちとせと言います。あなたは?」 手に力が入る 「わ、わたしは、」 彼女、ちとせさんは私の手を取って微笑んだ 「返しに来てくれるの待ってるわね?」 夕焼けの生ぬるい風が頬を撫でる 手元の深い緑が、暑さの白昼夢でないとつぶやいていた 緑の本はその夜一気に読みあげてしまった 森の屋敷で一人住む病気の少女は迷子の少年と出会い幸せに看取られていった
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