第1章

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化粧を直しにトイレに行ったんだよね。 その、 出てきた時の目が、 まるで戦いに行くような目 でさ。 彼氏が出てった直後は、 俺がオーダー取りに行っても気付かないくらい、 虚ろな目をし てたのに、 トイレから出てきた途端、 眉間に皺寄せて、 険しい顔になってたんだよ。 ‥‥今で もそんな顔して男と出て行くの。 千倉さん、 気づいてないでしょ」  「うん‥‥」  遥は、 半ば疑問に思いながらも頷いた。  「その姿がさ、 武器はいっぱい準備しているくせに、 鎧とか兜とか自分を守るものを何にも 身につけてないように見えたんだよね、 俺には‥‥。 この人は、 傷つくことを恐れないってい うか、 傷ついても気づかない女なんじゃないかな、 ってさ」  遥は、 武邑の言葉に目を見張った。
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