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よかった。生きてる…
「…そんな男のためにおまえは涙を流すのか?お人好しにも程がある」
中将さまの傍らから手首をぐいと引かれて仏頂面をした山吹の腕に飛び込んでしまった。
山吹は崩折れた中将さまを蹴飛ばすと縁の外に転げ落とした。
「女遊びも程ほどにするがよかろう……今度手を出せば無事では済まさぬ」
そう言って振り向くと、
「おまえは甘過ぎる。萩ならば斬り殺していただろう」
山吹が大袈裟なため息を吐き、指でわたしの目尻を拭った。
「震えが止まらないほど怖かったくせに…まったく」
琥珀色の怒りがあきれたような色に変わる。
脱がされたわたしの衣を肩に掛けると落ち着かせるように髪を撫でた。
「…血の匂いがするな、どこか傷ついたか」
気づいた山吹が匂いの元を辿る。
手首をつかむと月明かりに翳して痣と傷ついた場所に口をつけた。
なっ?
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