第8話 最悪のダンジョンは扉の向こう側に

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向かいからやってくる二人。見た目は10代後半、男のキャラは背丈は170cmくらい。女の方は155cmといったところ。 対して俺の装備品は扇子のみ。開閉式で有効範囲は広がるがリーチが伸びるわけではない。素材は薄く切った竹に和紙を貼り、観音菩薩像の絵と金箔があしらわれた代物だ。税込み1296円。 また、これは戦闘用ではない。いざというときは勿論これで戦闘を迎えないといけないが、生憎俺には短刀スキルを何一つ習得などしていな為、二人がかりで襲ってきた場合は降参するしかない。 とはいえ、ここは現実世界。 俺と彼らの関係は『狩る-狩られる』間柄でもない。お互い干渉さえしなければ事が起こることなんてまずない。 回避不可の強制イベントなんてゲームの世界でさえなかなか起きない。強制イベントなんて頻繁に起きようものなら、運営側の(サーバー)がパンクすることは不可避だ。 現実世界でも似たようなものだ。いちいち初見のプレイヤーに声をかけていれば、日なんてあっという間に暮れてしまう。 人間という生き物は、関心のあるもの以外は興味すら示さない。有限である時間をわざわざ割こうだなんて奴はいない。いても物好きな少数派だ。 「このままやり過ごそう」 波風を立てずに、ただ歩行だけしよう。会釈だなんてサービスは不要だ。 そのまま歩いているだけ。 ただ、歩いているだけなのに向こうが俺を見るなり声を出した。 「ねぇ、あいつ見てよ。超クレイジーなんですけど?!インスタ映えパナいよ!!」 「うわ・・・強すぎっしょ。俺でも勝てないわ」 ん゛!? なんで俺チラチラ見られているんだ。 うわ、ちょ、ちょっと待ってくれ゛!俺、人と目があったの何年ぶりだ?普通に怖いんだが。。 もしかして、俺がひ弱な自宅警備員(ニート)だってバレたのか?何故だ、何故気づいた?! 世間一般に流通していそうなジャージを着ているんだぞ?一般人と明らかに違うような動作をしていたのか俺。。 それとも限りなく空気化するまで存在を消した俺の認識阻害(ハイディング)スキルをも凌ぐ、探索スキルの使い手か、こいつら。。 侮った。 人間と数年ぶりのエンカウント。対象2体。インスタバエとかいう意味不明な発言は多々あるが、敵視しているようにも見えない。 ってか、インスタバエってなんだ?ハエの一種か?まじでこいつら何言ってるかわからん。日本人じゃないのか!?
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