2013人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ
「どうかしまして?」
「あぁ~……いや、気にしないでいいよ」
さて話を本筋に戻すと、この仮面をつけているだけで良太たちクラスメイトと今後遭遇しても、仮面の男は俺だと気づかれなくなったわけだ。なんせ声まで変わってるんだから。
これなら最悪、ちょっとした戦闘になっても平気だろう。
「じゃあ、少し行ってくるよ」
「えぇでも、どうやってエリュトロスまで行くんですの?
ケラスィアからエリュトロスまでは最低四日はかかりますわ」
「大丈夫。【瞬間移動】で行くからさ」
俺はそう言って左手の人差し指と中指を額に当てる。移動する場所は良太のできるだけ近くがいいな。まぁこれから向かうとこに良太がいるとは限らないんだけどね。
「あ、そうそうロロット。俺のことは孝太郎って呼んでいいよ。水城って言いにくいでしょう?」
「コータロー……?」
「そそ。こっちじゃ珍しいかもしれないけど、水城は苗字だからね」
仮面の下に笑顔を浮かべた俺はそのまま最初からいなかったように姿を消し、部屋にはロロットが一人取り残された。
「……消えた?」
ロロットは小さくつぶやき、自分が浮かび上がらせた世界地図に視線を移す。
エリュトロスに勇者は六人いると孝太郎は言っていた。勿論世界地図のエリュトロスに赤い丸は六つある。
だが、今は違う。
七つあるのだ。三つの丸があったところの近くに一つ丸が増えている。
「まさか本当に彼はエリュトロスに?」
こうして、水城 孝太郎の異世界生活初日はやっと後半戦を迎えることとなった。
最初のコメントを投稿しよう!