勇者になった彼らの行動

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 西の大陸、エリュトロス。  この大陸の木々は他とは違って紅く染まっている。  この世界の人間はエリュトロスの木々が情緒あふれるとして、年間何百の観光客がエリュトロスにやってきていた。  だが、現在は魔王の使役する魔物が人里離れた地域や、草原に出現しているために、観光客は日々減ってきていると言われている。  そんな観光客が減っている中、地図でいうとエリュトロスの中心に広がるグラシィディ平原を歩く三人の姿があった。 「達彦、大丈夫か?  少し休憩していこうか?」  先頭を歩くのは、黒い服に身を包んで腰に帯剣している金髪の男、橘 良太。  少し前、神と名乗る美少年に雷の異能力を与えられら異世界から魔王を倒すべく転移してきた勇者だ。  彼は異世界転移初日でありながら、グラシィディ平原の奥地にあるのどかな農村近くの洞窟で巣を作り、村人を脅かすアリのような魔物をその類い稀なる戦闘センスで全滅させたほど。  現状も。これからも。水城を抜いた二十九人の中で純粋な戦闘力は彼が一番だろう。 「いいや、平気だよ橘くん。僕は普段あまり運動をしていなかったから慣れてないだけさ」  橘の少し後ろを歩くのは眼鏡をかけたひ弱そうな青年、飯山 達彦。  たまたま良太と一緒の場所に転移した勇者であり、そんなに仲は良くはなかったが、一緒にアリの魔物を倒した二人の間には絆のようなものが生まれつつあった。
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