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身体の横にあった手が、どちらからともなく近づいていく。それが触れ合い、指同士が緩やかに絡む。
余計な言葉は必要なかった。頬を寄せ、唇を重ね合う。甘やかな感触に心がくすぐられた。口づけはすぐに深いものへと変わり、身の裡にじわりと焔が灯る。
二人、手を繋いだまま腰を上げる。縁側に下駄を並ばせ、そして熱い身体をもたれ合わせるようにして屋内へと戻った。
二人の寝室は奥の六畳だ。
今の季節は草色の蚊帳を吊してあり、中に入ると世界の外側に紗がかかって見える。意識にも幕が下ろされ、互いの他は誰もいなくなる。
「ぁ、あっ……剛実……」
ひとつの布団に二人で重なり合い、深々と身体を繋げ合う。ひしと腕を回してくる一弥を剛実もかき抱き、口づけを繰り返しながら抽挿を送り込む。
「あっ、あ……快い……」
帯を解いた時こそほの赤く眦を染めていた一弥だったが、今は肌にしっとりと汗を噴いて剛実にすがりついてくる。恥じらいに身をくねらせる姿態もいいが、愛撫の手に揉まれるうちに硬い蕾が綻び、花がだんだんと咲き初めるように乱れていくのがたまらない。剛実もまた吐息を弾ませ、汗を散らして律動を激しくする。
「あぁっ……!」
細い身をしならせ、一弥が果てる。剛実も同時に達して、一弥の上にうつぶせになる。
「はぁ、はぁ……」
重いだろうと思ってすぐに身体をずらそうとすると、しなやかな両腕でやんわりと引き留められる。一弥は仰向けのままで呼吸を整えつつ、改めて剛実の背を抱いてくる。
「……久しぶりだ、お前の身体の重み……」
一弥は恍惚としてつぶやくと、汗ばんだままの裸身をひたりと沿わせてきた。同窓会に出る前に翻訳仕事を片づけようとしていたので、ここ半月ほどは共に床に入ることもなかった。剛実だけが先に就寝する毎日が続いていたのだ。
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