番外編 花のようなひと

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 剛実は半分だけ体重をかけて相手にしっかりと腕を回し、同じく抱えていた独り寝の味気なさを埋める。くったりと力が抜けた身体が愛おしく、一人で重ねていた夜の寂しさがたちまち癒されていった。彼も同じように感じてくれているといいと、肌を合わせながら思う。  乱れた褥の上で横になったまま、二人、向かい合う。一弥はうっとりと頬を上気させ、胸許に額を預けてくる。剛実はそのしなやかな背を、熱い手のひらで幾度も撫で下ろしてやった。  常に己に厳しく、何事も頑張りすぎる傾向にある一弥なので、こんな時ばかりは身の鎧を剥ぎ、心ゆくまで甘えて欲しいのだ。と、彼の瞳が案の定とろんとしてき、細い身体でますますなよやかに纏いついてくる。  火照ったままの肌の、極上の絹地のような質感。剛実はさりげなく吐息をこぼした。すべらかな感触は、寄り添い合っているだけでも心地よかった。  しかし……こうまでぴったりとくっついているのは少々都合が悪い。兆してきた不埒な熱に任せて、また求めてしまいそうになるからだ。一弥は仕事明けで遠出したわけだから疲れているだろうし、このまま休んで欲しいのだが、腰の奥の熾火はすでにちろちろと燃えてきていて――  と、一弥がこちらにぐっと身を寄せた。胸と胸とをひたと沿わせてき、両腕で首を囲い込んでくる。さらには、首筋の太い血管に、ちゅ、と口づけまでして。 「剛実。……」  大胆な仕草に途惑っていると、耳許で熱っぽく囁かれた。相手の濡れた瞳を見、背筋がぞくりと震える。さらには、太腿に当たっている雄茎をつい、と意図を持って刺激され、正直に呼吸が弾んでしまう。  ここは存分に応えなければなるまいと、剛実は身を起こして再び一弥を組み敷く。唇を吸い、すぐに解けたあわいから舌を侵入させる。一弥もまた応えてきた。舌同士が隙間もなく絡み合い、褥に再び蒸れた呼気が満ちていく。 「ん、ふ……」  唇をついばみながら双臀の奥を探れば、そこはまだ柔らかさを保っていた。剛実はしかし潤滑のための軟膏を今一度すくい取り、指でたっぷりと塗り込めてやる。 「あ、あぁっ……」
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