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「西園に……………………から」
「え?」
ぼそりと呟やかれた低い声は、蝉の鳴き声にかき消された。
「部長?」
白いワイシャツの背中に声を掛ける。細い腰がゆっくりと振り返った。
「今度は海の見える席を予約しようと思う。一緒に行かないか?」
「!」
いつも通りのしかつめらしい顔で「無理にとは言わないが」と続けた部長に、私は思わず吹き出した。
「かしこまりました、部長」
ふふふと笑いながら立ち上がると、部長も一緒になって笑い出す。
水色の空には、一筋の飛行機雲が真っ直ぐに伸びていた。
完
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