5.アラーム

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カタン、カタン。 心地良い列車の振動に揺られ、少し肌寒い夜風に吹かれて、シュウたちは着々と、刻一刻と、レールの先にある崖へと向かって運ばれていく。 列車はすでに速度を上げ切ったようで、先ほどから一定の速さで走っている。 そして、“終点” まで止まることもない。 「ねえ、シュウ」 不意に名を呼ばれ、シュウは顔を上げた。 「なんですか?」 「君さ。……学校の成績、悪いだろ。もしくは、傍目にはわかりづらい障害を持ってる」 「――え」 ぶしつけにそんなことを言われて、シュウは声を詰まらせた。 戸惑いつつも、内心ムッとした。 ……そりゃあ、成績が悪いというのは当たっているけど。 だからなんだというのだ。見るからに頭の悪い顔をしてる、とでも言いたいのか。失礼な。 シュウは島雨の横顔を睨みつけたが、島雨は、こちらを見ることもせずに続けて言った。 「一斉検査によって、自殺志願者だと診断されるのはね。――つまり、そういう人間なんだよ」 「……はあ」 シュウは、溜め息混じりに顔をしかめた。 勉強ができない人間や、何かしらの障害を持った人間は、そうでない人間に比べて自殺志願者になりやすい。そう言いたいのか。 それはそのとおりかもしれない。 能力の低い者や健常な心身を持たない者は、それだけ社会の中で生きづらく、そのぶん人生を悲観して、自殺願望を抱きやすくもなるだろう。 でも、それがどうした。 なぜ、今このときに、わざわざそんなことを言うのだ、この人は。 「『そういう人間』で、悪かったですね。……けど、島雨さんだって、同じ自殺志願者じゃないですか」 シュウは、半分吐き捨てるように言い返した。 すると、島雨は。 「違うよ」 と。低く、しかしはっきりとした口調で、そう言った。
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