願いごと

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願いごと

 こんなことしたくない。だけど、あいつがぼくに早くやれとばかりに首を動かす。あいつは店の出入り口付近で仲間と共に、本を読むふりをしながら、ぼくを見張っている。  願うならば、この状況から逃れたい。だけど、それを行わなかったらどうなるのかは、目に見えている。ああ、胸がずんと重くなる。  ぼくはため息をつくと、嫌々、あいつが指定した雑誌を抜き出そうとした。  と、ぼくの指先に痛みが走った。  ぼくは思わず指を口の中に入れた。と同時に積んであった雑誌に膝が当たり、積んであった雑誌が音をたてて通路に散乱した。  視線の奥で作業をしていた女性店員が、こちらに向かって動いた。  それと同時に、あいつらが外に飛び出すのが見えた。すっと若い男性店員があいつらを追う。だが、あいつらはすぐに解放されるだろう。  駆け寄ってきた女性店員が、手早く散らばった雑誌を積み直し、ぼくが抜き出した雑誌を見、ぼくについてくるようにと耳元で囁いた。  ぼくは店員さんに言われるまま、店の奥に足を踏み入れた。  店の奥には、新しい雑誌と入れ替わりに引き下げられた雑誌が積まれ、これからビニールかけを待つ本がいくつも積まれていた。     
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