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第1章 水に覚める
水の音がする。
川? 違う…もっと、何か…
「綺麗な兄様だね。トモダチ、なれるかな?」
「うん。きっと今度こそ僕達にくれるよ」
今度は子供の声?
ここはどこだ?
とても気持ちが良くて、
起きなければならないとは思うのだが、
体が言う事を聞かない。
このままずっとこうしていたい。
「こら、織部(おりべ)、瑠璃(るり)。それはまだ漬けたばかりじゃ。触れてはならぬぞ。人間臭そうて爺はたまらんわ。早よ、離れ」
また新しい、今度は酷くしゃがれた声が聞こえ、小さな気配が去って行くのを感じた。
流石にそのまま知らぬふりでは居られなくなり、仕方なく目を開ける。
「うっ!」
顎先まで迫る濁った紫色の水に思わず顔を上げようとすると、幾らも動けないまま首が締まり、何かに固定されているのだと気付いた。
明度の低い水で見えないが、手も足も同様に動けない。
「汚ねぇ水だな…」
つい漏れた声に、去りかけていた気配達がまた近づいてくる。
「なんじゃ、もう目覚めよった。されど、そのまま二人静が咲くまでは大人しく漬かっておれよ」
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