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気付くと朝を迎えていた。
部屋の外で慌ただしく駆けまわる音や、時折発せられる怒号のせいで目が覚めたらしい。
マイは装飾品に興味を持ったのか、王子が姫に贈ったというアンクレットの山を漁っていた。
いや、正確には対悪魔用のおまじないだったか。
「これだけのお守りがあっても悪魔には歯が立たなかったな。ふん、何が反逆や再生を意味するだ。ただのこけおどしにもなりやしない」
「おまじないなんてそういうものよ。実際ローゼ自身だって信じてなかったじゃない?」
ベッドから起き上がりローゼの衣類を目にした瞬間、雷に打たれたようにある考えが脳内に浮かんだ。
オイゲンは、ローゼは、マイはあの時何と言っていた?
「マイ、もしかすると――」
だが私の発言を遮ってドアが乱暴に開けられ、頬を紅潮させたエミーリアが顔を覗かせた。
「二人とも今すぐ着いて来てください。王子が、オイゲン様が悪魔に殺されたのです!」
豪奢な部屋の中央には寝巻姿のオイゲンが倒れており、胸部にぐっさりと一本の矢が突き刺さっていた。
全体をもっと良く見るために顔を近づけると、ヘルマンに制止された。
「暗殺部隊特製の毒矢だ。死にたくなければ指一本触らないようにしろ」
「これが地下に安置してあった弓兵長の装備一式だ」
ゲレオンがヘルマンから革袋を受け取り、機械弓と矢筒を取りだした。
「昨夜から矢の数は減っていない。毒矢の重さや長さといった規格と毒の成分は、本人しか知りえない。弓兵長が撃ったものと同じとみてまず間違いないだろう」
「それが時間を超えて、王子に突き刺さったというのか。夫婦ごと連れ去るとはまさに悪魔の所業だな」
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