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マイが低く唸り、エミーリアはぶるぶると神経質に体を震わせた。
「お二方、悪魔の手先だなんて疑いをかけて申し訳なかった。昨夜は一歩たりとも部屋から出ていないとゲレオンに聞いている」
ヘルマンが沈痛な面持ちで謝罪の言葉を口にする。
「式典は中止して葬儀の準備をしなくては。今からでも国内外の悪魔払いで有名な神父を呼びにやろう。早速遣いの者に伝令を用意させる」
「いえ、悪魔払いを呼ぶ必要はありませんよ。悪魔はすでに私達の手中にあるのですからね」
私がはっきり言ってのけると、ヘルマンが呆れたように短く息を吐いた。
「何が言いたいんだい。オイゲンもエミーリアも亡くなった今になって悪魔を捕まえただって? 仮にそんなことができたところでどうなるのだね」
「はい、少なくともこれから訪れる王国の危機を、未然に防いでご覧にいれましょう」
「ふざけるのもいい加減にしないと城から叩きだすぞ。ならばその悪魔はどこにいるのかな」
「この部屋にいます。今私と話している相手こそが王室を蝕む悪魔の化身です。罪を認めてください、ヘルマン第三王子」
ヘルマンは怒る様子もなく、ただ私を嘲笑った。
「待ってください。この城には使用人を含めて、三百人もの人間が住んでいます。仮に今までの事件を人間が引き起こしたものだとして、どうしてヘルマン王子が犯人になるのですか」
エミーリアが困惑気味に発言した。
「私達が部屋を訪れた時に、エミーリアさんはローゼ姫を寝かしつけようとしましたね。ところがローゼさんは、眠たくないからと提案を拒否して代わりに入浴することを選びました」
「そんなこともありましたね。でもそれがどうしたのですか?」
「エミーリアさん、よく考えて。ローゼ姫の就寝時間は、お城の住人であれば誰でも知る機会がある。でも昨夜は本来床についているはずの時間にも関わらず、彼女は浴槽内で息絶えた。つまり犯人は、気まぐれで浴室へ向かったローゼさんの行動を知っていた人物に限られる」
「あっ! 私達三人と廊下で出会った人はゲレオン、ヘルマン両王子だけです」
「そして直後に私達の目の前から姿を消したのも三人。エミーリアさん、ゲレオン王子、ヘルマン王子です」
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