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バツの悪そうな顔をして、その場に佇む二人。
場内がざわつく━。
この『笑王戦』、ファーストラウンドのネタの持ち時間は、各4分である。皆、この4分という時間に合わせて、ネタ作りをしてくるのだ。
短くても、3分はやる。しかるに今の修助・松友のネタは、1分にも満たない。
「何やお前ら、それで終わりかい!」
浜野の怒声が響き渡り、スタジオが静まり返った━。
上方漫才界のスターで、かつて一時代を築いた故・横川やすじは生前、修助倫介とタウンダウン両組の漫才を、こう評している。
「あんなもん、漫才ちゃう。ただのチンピラの立ち話や━」
売れた後輩に対するやっかみも多分にあったろうが、ある意味的を得た評価だとする声もある。
つまり修・倫やタウンダウンの漫才は、練りに練ったネタを舞台でぶつける、というものではなく、話術の天才である島尾修助と松友里志が、その場の思いつきをペラペラと喋って笑いを取る、というタイプのものだったのである。
違いは、タウンダウンにはカンの鋭いツッコミの浜野雅義がいた、という事。修・倫が短命に終わり、タウンダウンが長続きした理由は、そこにある。
したがって浜野のいない今回の二人の漫才、思いつきが尽きればそこであっさり終わるというのは、言わば必然であった。
さらに言えば、推薦出場とは名ばかりの所詮は急造コンビ。しかも両者とも、漫才芸から離れて久しい。
加齢による衰えもあり、今の早い流れの漫才には、到底ついていけない。お笑い界のレベルは、年々上がっているのだ。
じっくりとネタ作りからやっていたとしても、現役バリバリの他の5組には、とても敵わなかったであろう。
審査に入る。当然だが修助と松友は、審査には加わらない。
結果は、火を見るより明らかであった。
3時のプリンセス 7─0 修助・松友
麻実とかなえは、涙を流して抱き合う。
3プリ、最終決戦進出━。
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