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「さっきやった順番でええんとちゃうの?1番目・粗大、2番目・ミルクキッド、3番目・3時のプリンセスで━」
えっ……?!
「一発目のネタを終えた順でやるのが、一番公平とちゃうか?」
修助さん……!
麻実は飛び上がりたい気分である。いや、あのシャクレに抱きつきたい気分━。
「という名誉会長のご指示ですが、いかがですか皆さん」
浜野が3組にマイクを向ける。
「ありがとうございます!助かります」
嬉しさに、麻実は身をよじらせて答えた。
「僕らも、1番目でなければいいです」
ミルクキッド・角刈りの内野も同意。しかし━。
「イヤですわオレ、初っパナは━!」
粗大が異議を唱える。それはそうだ。
『M-1』や『R-1』を見ても、過去に最終ラウンドで1番目に演じた組が優勝した例は、ほとんどない。
初っパナは不利━。お笑いの世界では、これは共通の認識である。
真剣勝負。粗大の訴えはワガママでも何でもなく、至極当然と言えた。
ちなみに『M-1』では、最終決戦に進出した3組のネタ順は、ファーストラウンドの順位が良かった出場者から順に指名していく形式となっている。
そのためこれまでの事例でも、成績順にほぼ3番目→2番目→1番目と選ばれていく。
しかし『笑王戦』のファーストラウンドは採点方式ではなく、二組による対戦方式。最終決戦進出者に順位をつける事は出来ない。
となれば━。
「ここはやっぱり、ジャンケンで決めましょうよ」
粗大が懇願する。
「まあ、せやな……」
手厳しい浜野も、ここは粗大の訴えに理解を示した。
「ありがとうございます!ほな、ジャンケンしましょ」
粗大が麻実と内野に呼びかけた、その時━。
「おいガキ。ワレ、何ぬかしとんのじゃ」
審査員席からドスの利いた声がかかった。
修助である。
「俺が決めた順番にケチつけるんか。ええ度胸しとるやないか」
浜野に対して見せていた表情とは、まるで別人。まさに、ヤ◯ザ……。
「いえ!1番目でやらさせて頂きます!」
粗大が、直立不動で言った━。
結局、修助の言った順番で最終ラウンドは行われることとなった。
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