硝子の琴

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硝子の琴

「硝子の琴」   王の愛せし 永遠姫(とわひめ)の   (かいな)(むせ)ぶ 音無き竪琴   王を愛せし 永遠姫(とわひめ)の   心響かせ  (おぼろ)の音色……      *  透き通った空間があった。  一面柔らかな銀光に満ち、それ以外の色は見られぬ。地面より盛り上がる小山さえも透けるような銀色で、時折鼓動のようにきらりと光る。  その、小山を背後にした平らかな場所に――  一人の娘が、いた。  美しい娘だ。まるで自身が光を生むかのように、その輪郭は柔らかな乳白色の光が縁取り包む。  磨いた真珠のような肌を覆う白い布地の裾が、ふうわりと地面に広がっている。  透き通った空間では、その娘だけが異質だ。か細い体躯(たいく)の白は何色にも染まるようでいて、その実決して周囲の銀色には染まらぬ。  長く伸びた髪もそれは見事な純白をしている。地面に座り込むようにしている今、その髪の先は地につくほどの位置にある。娘がほんの少し頭を動かすたび、純白の先端たちが地上をくすぐるようにかすかに揺れる。     
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