1話

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今日は年に一度の七夕。 2***年ー。 明日もきっとどこかに爆弾が落ちて来る。 明日生きてる保障なんかどこにもない、そんな灰色に変わった世界。 「おなかすいた。」と君は言う。 私は少ししかないパンをちぎって君に渡す。 それでもまだ君は「もっと欲しい。」と言って私に手を伸ばしてくる。 {これでは私の分が足りない。でも、弟は・・君はー} 「待ってて。今、持ってくるから。」 そう言い私は走り出す。 ボロボロの服。 1人ボッチの子供。 激しい爆発音。 悲しい声。 脅してる声。 泣き叫んでいる人々の群れ。 それらは本当に いらないもの。 聞きたくなくて、存在してほしくないもの。 いつもは綺麗な夕焼けが今日はなんだか血の色に見えた気がした。 「早く見つけないとっ・・。」 しかしこんな町に食料なんてあるはずもなく。 それでも私は走る。 道に迷って。 銃を向けられる。 「駄目だよ、お姉ちゃんがこんなんじゃ・・。」 あ、もう無理だ。 もう、取り囲まれている。 「そこの女っ!!動くな!!!」 「っ!!!」 走るのをやめて手を前に出し跪く。 「助けて。誰か。弟1人じゃ・・生きられない。」 言ってもだれも私を助けない。 わかってる答え。 「助けてあげるよ。今日は七夕。君の願いを1つ、なんでも叶えてあげる。」と空から声が聞こえる。 誰? 声の持ち主はわからないまま。 周りに雑音が入る。 「私のお願いを叶えて!」「何なのあの子」「ずるい」 「さ、早く。」 ほんとに願いを叶えてくれるなんて 何を願おう。 あ。思いついた。 「戦争がこの世から無くなりますように。」 「それでいいの?叶える代わりに・・・・・あなたの命をいただきますが。」 でも、いいの。戦争が無くなれば。 「はい・・。」 私は小さく頷いた。 「それでは・・・わかりました。あなたの願いを叶えます。」 目の前が急に暖かい光で包まれていく。 もうどうでもいいや。そんな感情が急に私の心を灯す。 目覚めた場所はベッドの上だった。 どうやら命まではさすがに奪わなかったらしい。 たくさんの小さな家、歩く人、笑う人。 「凄いっ。ほんとに叶えてくれたの・・?」 あの時私の願いを叶えてくれたのは誰だっただろうか。 今ではもう思い出せない。
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