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ターン!
小気味のいい音が響く。
「うわおっ、ど真ん中。調子いいじゃねーのキョウ」
「くどいようだが俺の名はタカシだ。喬と書いてタカシ」
残身(ざんしん)、いわゆる矢を放ったあとの余韻をスッキリ決めた後、黒髪色白のイケメンはトレードマーク化した黒縁メガネを右手中指でクイッと上げる。
体操服がそこはかとなくオサレに見えるのは顔故か?
弓道着じゃなくガッコの体操服なのは、いちいちめんどくせんだよ、袴とか、胴着とか。
部活中は体操服が一番だ。
「いいじゃねーの、こまけーこと気にすんなよ、キョウ。俺は三国志大好きなんだ」
「三国志じゃない三国志演義だろう、お前の好きなの。羅貫中だ」
「うわ、小姑魂だよこいつ」
おしゃべりはそのくらいだ。
「じゃ次な」
二射目。俺から。
弓構え(ゆがまえ)に入る。
打起こし、続いて以下略。弓道の作法、射法八節(しゃほうはっせつ)省略だ!
当たりゃいいんだよ当たりゃ。
引き絞り、プルプルしたところで会(かい)射、離(しゃ、はなれ)
続いてキョウが射(しゃ)
的から青い空に向かって、ターンターンと小気味いい音が響き渡る。
「おやあ、今度は俺の方が的中」
奴はギリ的を外して安土(土だよ土)にさっくり。
「あのな、冬弥(とうや)君。俺達インターハイ出場決定の選手。来月は全国相手に戦うわけだ。的中っていうなら八射八中でもおかしくないのだが」
お前外したじゃん。
それとな。
そのエリートイケメン的に眼鏡キラリってどうなんだ?
「きゃー素敵です~タカシ先輩~」
校舎の二階から黄色い声が飛ぶ。
あいつら、まあたあそこから見学かよ。
キョウの親衛隊っての?
ファンっての?ストーカーっての?
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