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【第1章】
2017年7月3日の月曜日。
今年の6月に33歳になったばかりの二子新司は定期異動により初めて茅場町本社社屋3階にある「人事部」を訪れた。
新司はこの7月から、人事部人材開発課の所属となったのだ。
それまでは経理部で一スタッフとして働いていた新司にとってみれば人事部への異動は正に青天の霹靂であった。今でも信じられないくらいの異動だ。
新司が勤めている会社は、株式会社爽快。
爽快は、日本最大のトイレタリー企業(日用品。広い意味での化学薬品、細分化すると化粧品や洗剤、医薬品など)である。
・売上高1兆5,000億円。
・営業利益2,000億円。
・資本金850億円。
・従業員数7,200名。連結対象会社合計33,000名。
日経225常連の押しも押されもせぬ大企業だった。
そんな大企業の人事部。それも人材開発課なのだから、これはかなりの大抜擢と言って良かった。
最初異動を通達された時、驚くには驚いたが、人事部とは言っても労務課の配属なのかと直観的に思った。
社員の給与計算や健康保険、年金保険の事務などを行う労務課ならば、経理課に所属していた自分のキャリアから見て、あまり逸脱していない。
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